ひとりでも多くの人に伝わるようにとか、世代や環境を超えていろんな人が共感できるようにとか、そんなこたあ知ったこっちゃねえ。と、ごくパーソナルな事情で、ごく個人的な思いをぶつけただけのせまーい曲が、世代や環境や時代を超えて、多くの人に届くことがある。「おまえの事情なんか知ったこっちゃねえよ」という曲が、趣味や生活や住む世界の異なる人たちの心を共振させたり、わしづかみにしたり、ぐっさりえぐったりすることがある。
「共感できるように」という方法で作られたものが、思惑どおり（あるいは思惑を超えて）世に広がっていくのも、確かにポップ・ミュージックというものの醍醐味ではあるけど、個人的には後者の方が、よりいっそうグッとくる。そういう魔法のような瞬間を体験したくて、長いことロックとかを聴き続けている、というところも大きい。

「深夜高速」が、時代や世代やジャンルを超えて、ゼロ年代の日本のロックを代表する名曲のひとつになったように、フラワーカンパニーズは本来、というか誰がどう見ても、そっち側の歌を生み出してきたバンドである。
ただ、2017年で結成28年、最初にメジャー・デビューしてから22年という長いキャリアなので、常にギアがトップに入っていたというわけでは、まあ、ない。
調子いい時もあれば、そうでない時もあった。バンドとして、あるいは個人としてのコンディションはいいのに、曲はそこまでキレッキレじゃなかった時期もあったし、その逆に、コンディションは最悪なのに……いや、「だからこそ」か、今でもライブでイントロが鳴ると大歓声が巻き起こるような名曲を生んだこともある。

という観点からいうと、再度メジャーを離れ、自らのレーベル「チキン・スキン・レコード」を作り、ニュー・アルバム『ROLL ON 48』を作り、リリースする2017年の夏のフラカンは、何度目かの「キレッキレの時期」であるようだ。
ここに収められた11曲が、それを証明している。特に、テーマ設定からして「13年後の『深夜高速』」として書かれた、そしたらよりパーソナルでよりドープでより重くて、そしてより「個人の事情が普遍にひっくり返る」マジックに満ちた曲になった「ハイエース」が、そうだ。

ひとりでも多くのロック・ファンが、このアルバムに、今のフラワーカンパニーズに触れることを願う。
メジャーでもっとも多くの人に聴かれていた時期よりも（1998年）、初の日本武道館をソールドアウトさせて大成功に終わらせた時よりも（2015年）、今のフラワーカンパニーズはすばらしい音楽を作り、すごいライブをやっていると思う。

鈴木圭介、つい最近までボロボロのスランプ状態だったけど。竹安堅一、首のヘルニアで今大変だけど。
あ、グレートマエカワとミスター小西は、心身ともに元気です。