2025.10.07
【column】9/20(土)「フラカンの日本武道館 Part2 〜超・今が旬〜」@日本武道館 ライブレポート
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文・天野史彬 写真:新保勇樹
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2025年9月20日、フラワーカンパニーズが10年ぶりとなる日本武道館ワンマン公演「フラカンの日本武道館Part2 〜超・今が旬〜」を開催した。熟練の凄みと、消えることのないみずみずしさを兼ね備えた演奏。派手になり過ぎず、かと言ってストイックにもなり過ぎず。躍動するバンドと楽曲の世界観を彩り、会場を鮮やかに彩った演出。ダブルアンコールまでの全26曲、この10年間でリリースされてきた楽曲を中心としたリアルタイム感のあるセットリスト。すべてが「完璧だ!」と感嘆してしまうような、感動というもののさらに向こう側へ突き抜けていくような、素晴らしく爽快なライブだった。
ライブの1曲目を飾ったのは、今年リリースの最新アルバム『正しい哺乳類』収録の“少年卓球”。開演時間が来て、会場の照明が落ちて真っ暗になり、照明が点滅しはじめ、野性的なビートが鳴り響く登場SE“Eeyo”が流れ出した瞬間から異様なほどの高揚感が会場を包み込み、そして竹安堅一の目が醒めるようなギターから“少年卓球”が始まった瞬間に、もうこの日のフラカンの勝利は確定した――そんな気持ちになった。『正しい哺乳類』はこの10年をかけてフラカンが研ぎ澄ませてきたバンドサウンドとメッセージ性が高次元で結晶化した大傑作だが、その中でも、“少年卓球”はポップで疾走感があり、初めてロックで高揚した瞬間をギュッと思い出させるような楽曲だ。10年ぶりの武道館とライブの1曲目を飾るに相応しい楽曲が最新アルバムに収められているという点で、今のフラカンの絶好調ぶり、そして、この10年間のフラカンが歩んだ道のりの豊かさを感じずにはいられない。
他にも美しい情景を想起させる“アメジスト”や“ミント”、下世代へのメッセージを歌う“履歴書”、長い旅路を歩き続けるバンドの生き様を伝える“ハイエース”(この曲の演奏時には、ステージセットとして、実際に60万キロ以上を走行したというバンドの先代ハイエースが登場した)、キャッチーなサウンドとモチーフの中に現代社会や人間への批評眼を忍び込ませた“ラッコ!ラッコ!ラッコ!”……この10年で生まれた多彩な楽曲たちが響き渡った。“星のブルペン”での、夜空から降り注ぐ星の光のような照明演出も忘れがたい。
もちろん“深夜高速”や“感情七号線”、“馬鹿の最高”“真冬の盆踊り”といった、それ以前発表の名曲たちも会場を盛り上げる。「久々の曲を」という紹介と共に、1998年発表のアルバム『マンモスフラワー』の最後に収録された“虹の雨あがり”が始まった瞬間には、観客たちからどよめきにも似た歓声が上がった。<いつまでもそう どこまでもそう これからもきっとそうさ/うまくいく事もあって うまくいかない事はないのさ>――そう歌う“虹の雨あがり”を今、武道館で歌いたいと思ったバンドの心が、とても強くて、優しくて、頼もしい。
個人的にこの日のハイライトは、本編の終盤で披露された“最後にゃなんとかなるだろう”だった。2017年発表のアルバム『ROLL ON 48』に収録された楽曲。このアルバムは前回の武道館公演のあとにリリースされた最初のアルバムであり、そして、このアルバムから再びフラカンは自主レーベルでの活動に戻った。そんな時期に歌われた<最後の最後の最後には 絶対なんとかなるんだぜ>というフレーズは、この2025年の武道館の観客席にいる僕にとって、未来への希望のメッセージのように響いた。「絶対になんとかなる」――そう歌うロックバンドが、武道館のステージで、とても人間くさく、それでいて光に照らされながらロックを演奏している。これって、シンプルに奇跡じゃないか。
また武道館でフラカンのライブが観たい。そう心から思う。武道館はほいほいできる会場ではなくても、こんなフラカンのライブをこれからいっぱい観たい。思えば初めてロックを聴いた頃からずっと、その衝撃や感動が「思い出」という箱の中に納まらなくて、ずっとリアルに生き続けちゃうものだから、僕はこうやって文章を書いたりしている。この10年ぶりのフラカンの武道館ライブも、「思い出」という箱にはなかなか収まらないだろうし、収めるべきじゃない。これはきっと新しいはじまり。これからフラワーカンパニーズは、さらに凄いことになるだろう。絶対にそうなるだろう。
◎フラワーカンパニーズ「フラカンの日本武道館 Part2 〜超・今が旬〜」
2025年9月20日(土)@日本武道館 OPEN 15:30 START 16:30
<SET LIST>
SE Eeyo
1 少年卓球
2 ピースフル
3 ただいま実演中
4 ライトを消して走れ
5 アメジスト
6 夜空の太陽
mc
7 馬鹿の最高
8 最高の夏
9 友達100万人
10 ミント
11 ハイエース
12 深夜高速
mc
13 履歴書
14 感情七号線
15 星のブルペン
16 日々のあぶく
17 虹の雨あがり
mc
18 行ってきまーす
19 ラッコ!ラッコ!ラッコ
20 人は人
21 最後にゃなんとかなるだろう
22 白眼充血絶叫楽団
encore
EN1 涙よりはやく走れ
EN2 はぐれ者讃歌
EN3 真冬の盆踊り
encore2
EN4 NUDE CORE ROCK’N’ROLL